2007年12月23日

テクニックとは。

この記事は2004年3月8日の記事を加筆修正したものです。

さて、今日は、某所でダッパーサクセーバー勢ぞろいの練習。午前は9人での練習、午後からはそれぞれ四重奏と五重奏に分かれての練習でした。
 私は、プロでは決して無いので、練習時間も限られているのですが、どうしても少ない練習時間だと、回らない指を回すための練習に終始してしまい、なかなかその次に進むことが出来ません。すぐに回るだけのテクニックがあればと思うのですが、それは一朝一夕で手に入るものではないのです。
 突然ですが、今日から「展覧会の絵」シリーズがスタートします。今日、紹介するCDは、聞くたびにテクニックと芸術性について考えさせられる一枚でもあります。
 さて今日の「展覧会の絵」は、

エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
ロンドン(キング)230E 51035
禿山の一夜、歌劇「ホヴァンシチナ」-前奏曲

まず、このCDは、世間の評価でも、名盤と言われることがあることを書いておきます。スコアと、見比べて聴いてみるとわかりますが、ほぼ、スコアの指示通りの演奏を実現しているようです。いくつかあるプロムナードも比較的指定のテンポを守ってそれぞれの速さをつくっている感があります。
 わたしは、展覧会の絵を聴く時サクソフォーン・ソロの古城を聞くのはもちろんですが、他に良いとか悪いとか、芸術性とかにかかわらず、ただ単におもしろさとして聴く部分がいくつかあります。まずは、プロムナードの表現。(テンポや扱い方を含めて)
そして、各部のアチェルランド開始のタイミング。そして、ババ・ヤーガ-とキエフの大門の間を開けるか、開けないか。キエフの大門の4小節目ごとの後半の2分音符をどう扱っているか。
と言うことをまず聴いてしまいます。
この演奏では、プロムナードは、ほぼ楽譜の指示通り、各部のアチェルも大体、楽譜に書いてある場所から、そして、ババヤーガ-の最後はきっちり、スタッカートで終わり、次は開ける、4小節ごとの後半の2分音符は、楽譜通りのアクセントで処理、と言った具合。つまり、ほぼ、楽譜に忠実。全体は、多少あっさりとした印象を受けるかもしれませんが、色彩感は豊です。さすが、ファリャやストラヴィンスキーの曲を初演したほどの人物、アンセルメです。
 古城は、比較的早めのテンポで、前に前に流れるじ。ことさらテンポを揺らすこともありません。アルトサックスソロも楽譜の指示通りの音の処理を貫いているように思えます。ソロの音はクリアーで美しい音です。日本のクラシックサクソフォーンの祖、故坂口新氏が、古城のテンポならアンセルメ盤が一番良い、と言っておられたとか。
 曲全体は、巨大なキャンバスに明るめの絵の具で精細画を書いた感じ。ただ、よく、アンセルメの録音は「ヘタウマ」と言われるように時折管楽器群が、技術的に破綻しているとしか思えない部分があります。しかしながら、それを差し引いても、緻密で楽譜を隅々まで読みっとったような演奏はすばらしく、ある種の「味」となっているのが不思議なところです。バランスのとり方や、響かせ方は、超一級品。小手先のテクニック的なものよりも、楽譜にあるものをきっちり読み取っていけば、これだけ高い質のものが出来上がると言うお手本でもあります。
 これから展覧会の絵を聴こう、と言う方にもオススメの一枚。きっと、「展覧会の絵」のスタンダード盤と言うべき一枚となることでしょう。


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