2008年05月28日

誰の、何の個性というべきか。

以前、人から借りた楽器を吹いていたじきがあります。同じセルマーと言うメーカーの同じシリーズ2という品番の楽器なのですが、作られた年代が異なるため、かなり違った感じの楽器になっています。キーの形状や、感覚、機構等、様々な点で相違が見られます。
 私の楽器はシリーズ2というものの中でもかなり初期に製造されたものなので、音色や、吹奏感はかなりその前のモデルの楽器に近いようです。また、楽器は工業製品なので、製造時には必ず、許容範囲のばらつきが出来ます。人によってはそれを楽器の個性と言ったりもします。
 以前人からお借りした楽器は、私の楽器に比べてかなり音色が明るい傾向で、楽に鳴る感じです。平たく言えば少しライトな吹き心地です。私の楽器に比べると少し物足りないぐらいです。最も、私の楽器は調整が不十分だったのでそのために鳴りにくかった、という想像も出来るのですが、そういう部分とはまた別のところで楽になる楽器だと感じます。
 聞いたところによると、道具(楽器やマウスピース)による違いというのは奏者本人が感じているほどには、聞き手は感じない、ということです。確かに、4~5万円の楽器と比べるのなら、いざ知らず、違うメーカーの30~40万円するクラスの楽器を並べて吹き比べても、聞いている方にはさほどの違いは感じられないのかもしれません。
 それよりは、○○さんの音、というように吹き手のキャラクターとして音色が造られる部分が大部分のようです。なので、本来、その人の道具としてあっているものならば、どんな楽器を使おうがその人の音色を奏でてくれるようになるものだと思っています。弘法筆を選ばず、のように素晴らしい音色を持った人は、どの楽器でも素晴らしい音色を奏でることが出来るのではないでしょうか。(弘法大師は実際に筆を選んだようですが…。)もちろん、それは楽器が道具としての一定のレベルをクリアしていることが前提ではありますが。
 なので、同じ楽器を吹いても吹く人が変われば、かなり違った音色が聞こえてくることになります。
そこで今日の一枚。


誰の、何の個性というべきか。
ガーシュイン/中村均一
Meister Music(マイスターミュージック)  MM-1047

このCDはアルモサクソフォーンカルテットのリーダとしても有名な中村均一氏のソロアルバムとして発売されているものです。中村氏はソロ活動も積極的に行なっています。このアルバムにはカルテットの曲の演奏とピアノ独奏も1曲収録されています。ピアノは白石光隆氏によるもの、カルテットはもちろん、アルモサクソフォーン・カルテットです。
 さて、中村均一氏の使用するソプラノサックスはヤナギサワのシルバーソニックというモデルなのですが、そう、私が使うものと同じです。さらに言えば、JAZZプレーヤーの本多俊之氏も同様の楽器を使用しています。まあ、私のことはともかく、中村氏と本多氏の音色を比べると、楽器メーカーやモデルによる音色の比較論が、世間で騒がれているほどは意味の無い、陳腐なものに思えてしまいます。楽器の個性は奏者が選ぶもので、聞き手に違いを聞かせるものではないのだとつくづく思わされました。
 中村氏の演奏は楽器にしっかりと息の入った芯の通った力強い音色の中にも独特の歌心としなやかさが感じられ、素晴らしいものだと思います。実は中村氏はクラシック奏者であるにもかかわらず、使用しているマウスピースはジャズ仕様のメタル(金属)製のものです。それでいながら作り出されているあの音色には微塵も金属的な響きを感じないのが素晴らしいところです。
 サクソフォーンを吹く全ての方に、ガーシュインが好きな方にオススメの一枚です。


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