2007年12月29日

対立。

注:この記事は2004年3月13日に書かれた記事を加筆修正したものです。


世の中、様々な、対立、論争、紛争が常に巻き起こっています。
日常の中の小さなものから、国際的な大規模のものまで、多分、途絶えた瞬間は無いのでしょう。
人はしばしば、意見論争であるにもかかわらず、武力を使用するようになります。武力に訴えると、帰ってくるのはまた武力。悪循環の繰り返しです。交渉において平行線をたどることは時間と労力を費やすことですが、武力を使うことに対する被害や、兵器にかけるお金を他の目的に使用すると、もっと前向きな解決が出来るのかもしれません。まあ、兵器を無くすことよりも、兵器を作る人々の再就職先を考えた方が早道なのかもしれません。
世の中の対立全てがなくなることは人間として違う意見をもっている以上ありえないし、その必要もないと思うのですが、利益や、利害のために武力を使うことは是非、やめて欲しいものです。
さてそこで今日の一枚、今日の「展覧会の絵」

セルジュ・チェリビダッケ指揮/
  ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
ラヴェル/ボレロ
東芝EIM TOCE-11608

 皆さんの中でセルジュ・チェリビダッケという名前をご存知の方は結構なクラシック通か、ベルリンフィルに詳しいかただと思います。レコーディングという作業を頑強に否定した人物でもあり、そのためにいま、CDなどで聴くことの出来る彼の演奏はごく僅かです。クラシック業界での彼の位置付けは「カラヤンに敗れた人物」ともされているようで、確かに、フルトヴェングラーの公認として選ばれたのは、カラヤンで、チェリビダッケは、ベルリンフィルを追われることとなりました。カラヤンが、早くから録音と言う音楽活動に注目し、世界一流の技術と表現力を持ったベルリンフィルを手兵としたのに対し、チェリビダッケはライブで生で聞く音だけが本来聞かせたかった音色、音量、といって録音が発売されることを嫌い、当時としては二流とも評されたミュンヘンフィルを手兵にしたのです。その中には、カラヤンに対し、「おまえはそれでその程度の音楽しか出来ない、私は、これだけのものでも十分に自分の音楽を表現できる」という挑戦的な態度も見て取れます。
 演奏の方は、とにかくテンポが遅い。ボレロの演奏時間が18分を超える指揮者もそうはいないと思います。しかし、初めて聞いた人には異様とも思える遅さに度肝を抜かれるかもしれません。しかし、それだけ、全ての音を美しく聞かせ、表現したいと言う意志が伝わってくるようでもあります。曲を慈しむような演奏です。実際、フォルテの場所をピアノで演奏したり、していますがそれは逆に作曲家が何故そこにその強弱記号をつけたのかと言うことを徹底的に考え尽くして、新たに音楽を構築しているようでもあります。
プロムナードもよく違いが表現されていて、美しいものです。
古城のソロは、ゆったりとしたテンポで美しく、表現もすばらしいものです。アチェルランドは急激ではないのですが元のテンポが遅いだけに心地よい感じです。ババ・ヤーガ-とキエフの間は開けずにそのままです。また、キエフの4小節ごとの後半の2分音符はなんと小さく演奏しています。おそらく、あのアクセントを、強く吹くアクセントではなく、音を大切に演奏するアクセントと解釈したのだと思えますが、それをやってしまえるのが巨匠たる所以かもしれません。
 老練の円熟した画家が、巨大な建造物の壁に柔らかな筆遣いでゆったりと美しく書き上げた絵のようなイメージです。
カラヤンの演奏しか聴いたことのない方には是非聞いていただきたい一枚です。今までと全く違う展覧会の絵を聞いてみたいという方にもオススメです。


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